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倉敷市の合計特殊出生率の推移:2002年から2024年まで

以前の記事で倉敷市の自然動態——出生数・死亡数・普通出生率——の長期推移を扱いました。今回は、出生の勢いを別の指標で読みます。合計特殊出生率です。

合計特殊出生率は、年齢別の出生率を足し合わせたものです。いまの年齢構成の影響を受けにくいので、「1人の女性が生涯に産む子どもの数の目安」として使われます。その記事の普通出生率(人口千人あたりの出生数)とは別の指標です。

倉敷市の年次系列は2002年から2024年まで。直近の2024年の合計特殊出生率は1.39です。全国・岡山県の長い系列とあわせて、実績値だけで追います。推計は入れません。

目次

長期で見る合計特殊出生率:1960年からの全国と岡山県、そして倉敷市

1枚目は、1960年以降の長い推移です。

出所)全国・岡山県は国立社会保障・人口問題研究所、倉敷市は倉敷市保健所の公表データより筆者がグラフ化。実績値。
出所)全国・岡山県は国立社会保障・人口問題研究所、倉敷市は倉敷市保健所の公表データより筆者がグラフ化。実績値。

データ入手の事情で、始まりがそろっていません。全国は1960年から、岡山県は1970年から、倉敷市は2002年からです。

全国のグラフで、いちばん目立つ谷があります。1966年——丙午(ひのえうま)です。

1965年は2.14、1966年は1.58、1967年は2.23。1年だけ深く落ちて、翌年に戻っています。迷信や社会的な空気が、出生行動に刻まれた年として知られます。

岡山県は1970年に2.03で始まり、その後は全国と似た下り坂をたどります。倉敷市のグラフは中程右寄りから現れ、2002年は1.46——全国(同年1.32)より高い位置です。

2002年以降:倉敷は県・全国より高く、いったん上がって下がる

2枚目は、倉敷市の年次データがそろう2002年から2024年です。本稿の主役のグラフです。

出所)全国・岡山県は国立社会保障・人口問題研究所、倉敷市は倉敷市保健所の公表データより筆者がグラフ化。実績値。
出所)全国・岡山県は国立社会保障・人口問題研究所、倉敷市は倉敷市保健所の公表データより筆者がグラフ化。実績値。

この期間、倉敷市の合計特殊出生率は一貫して全国・岡山県より高い水準にあります。

倉敷市は、2002年の1.46から上昇し、2016年に1.73でピークを迎えました。その後は下がり、2024年は1.39です。

岡山県も2016年に1.56でピーク。2024年は1.27です。

全国は、2005年に1.26まで落ちたあと、2015年に1.45までいったん戻し、2024年は1.15です。

2024年の並びは、倉敷市1.39、岡山県1.27、全国1.15——倉敷市が県・全国を上回る構図は続いています。ただし、ピークからの低下もはっきりしています。

合計特殊出生率が2010年代に上がって見えた分析——テンポ効果

2010年代前半、全国も岡山県も倉敷市も、合計特殊出生率がいったん上がって見えます。それは「出生が戻った」だけとは限りません。

3枚目は、全国の合計特殊出生率を、母の年齢(5歳階級)ごとに分解した推移です。

出所)国立社会保障・人口問題研究所の公表データより筆者がグラフ化。全国・実績値。
出所)国立社会保障・人口問題研究所の公表データより筆者がグラフ化。全国・実績値。

専門的になりますが、女性が子どもを産むタイミングの変化によって、ある年の合計特殊出生率(期間の指標)が見かけ上、一時的に低く——あるいは高く——見える統計上の影響をテンポ効果と言います。将来産む子どもの人数が変わらなくても、出産年齢が後ろにずれる局面では、その年の合計特殊出生率は押し下げられます。ずれのペースが一服したり、遅れていた出生が上の年齢で実現したりする局面では、逆に持ち上がって見えることがあります。晩産化が進む過程で、こうしたテンポ効果が現れやすくなります。

母の年齢(5歳階級)ごとの出生率を見ると多くのことが読み取れます。

20〜24歳と25〜29歳は、一貫して下がる傾向です。一方、30〜34歳と35〜39歳は、1990年代以降、上昇基調が続いてきました。出産のタイミングが後ろにずれていく変化が、内訳の形に出ています。

この二つが同時に起きると、合計特殊出生率は単純には読めません。20代の下降ペースを、30代の上昇ペースが上回った時期に、全国の合計特殊出生率は2005年の1.26でいったん底を打ち、その後上昇に転じました。2015年には1.45まで戻しています。

どの年齢帯がいちばん厚いか、という点でも交代が起きています。2005年頃、寄与がいちばん大きい階級が25〜29歳から30〜34歳へ移りました(同年、25〜29歳0.423、30〜34歳0.429)。2015年には30〜34歳が0.517、35〜39歳も0.286まで厚くなっています。

その後、30代の上昇にも陰りが出ます。2024年は30〜34歳が0.437、35〜39歳が0.257。20代の細りも止まらず(20〜24歳0.076、25〜29歳0.306)、全国の合計特殊出生率は再び下降し、1.15まで下がっています。

この内訳は全国のデータです。倉敷市・岡山県の年齢階級別データは入手できていません。2010年代の「いったん上がって下がる」形を読むとき、倉敷市・岡山県でも全国と同じ現象(テンポ効果)が起きていたと考えるのが自然だと思います。

まとめ

倉敷市の合計特殊出生率を、長期・短期・年齢階級別の三つの視点から見ると、次の輪郭が浮かび上がります。

  • 倉敷市は県・全国より高いが、2016年の1.73をピークに、2024年は1.39まで下がっている
  • 2024年の並びは、倉敷市1.39/岡山県1.27/全国1.15
  • 長期の全国グラフには、1966年・丙午の谷がある
  • 2010年代の上昇は、テンポ効果の可能性が高い

自然動態の記事の出生数・普通出生率とあわせて読むと、倉敷の「生まれる側」の数字がより立体的に見えてきます。

ひとつ、先の注目点があります。2026年は丙午です。前回丙午の1966年では、全国の合計特殊出生率が急減しました。2026年の実績がどう動くかは、いまは分かりません。ただ、2027年には2026年実績の速報値が出る見通しなので、注目しておきたいと思います。

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