私が育った頃の倉敷市は、「地方交付税の不交付団体」であることが誇りでした。財政力に余裕がある街、という空気がありました。
1982年に倉敷を離れました。そのときの財政力指数は1.17。1を超えていました。裕福な倉敷市だったはずが、2024年に戻ってきてびっくりです。直近の確定値は0.82。
気になって調べてみました。目的は、倉敷市の財政サイクルを読むこと。その入口の一つが、財政力指数です。調べてみると、長期の下降トレンドが、はっきり見えていました。
この記事では、実績値を追います。将来の推計は入れません。グラフの右端(2025年度)だけ、暫定値です。起点は1969年度——倉敷市の三市合併後、財政力指数(過去3年平均)の計算に必要な3年度分が初めてそろう年からです。
財政力指数とは
財政力指数を読むには、まず二つの算定値を押さえる必要があります。どちらも、市が予算で好きに動かせる実額ではありません。
基準財政需要額は、標準的な行政サービスを行うために必要な経費として、算定上置かれる額です。
基準財政収入額は、標準的な地方税収入等のうち、地方交付税の算定に使う収入です。ここがポイントで、標準的な税収入の75%が算入されます。残りの25%は留保財源として、算定の外側に残ります。
この二つから、次の式で財政力指数が出ます。
財政力指数 = 基準財政収入額 ÷ 基準財政需要額(過去3年平均)
指数が1.0以上なら、基準財政需要額を基準財政収入額で賄える——制度上は地方交付税の不交付側です。1.0未満なら賄いきれず、交付側になります。
なお、指数が1でも「税収の全額で需要をまかなっている」わけではありません。算入されるのは税収入の75%で、25%は留保財源として残る、というのが制度の仕組みです。
倉敷市の財政力指数:1973年度からの長期低下
1枚目のグラフは、倉敷市の財政力指数の長期推移です。

1969年度は1.31。ピークは1972年度の1.54です。その後は長期の低下が続きます。
1982年度は1.17。1997年度は1.022で、まだ1をわずかに超えていました。1998年度に0.982となり、初めて1.0を割りました。
底は2005年度の0.784です。その後はいったん持ち直す局面もありますが、おおむね0.8台で推移しています。直近の確定値は2024年度の0.82。グラフ右端の2025年度0.815は暫定値です。
財政力指数が下がっている理由——収入より需要の伸びが大きい
財政力指数が下がった理由を、収入と需要の実額で見ます。

基準財政収入額も基準財政需要額も、長期では増えています。ただし、伸び方は同じではありません。
単年度で見ると、1997年度に需要(約641億円)が収入(約624億円)を上回り始めます。財政力指数は過去3年平均なので、指数が1.0を割るのは翌1998年度です。同年の収入は約635億円、需要は約672億円、差は約37億円でした。
不足は拡大します。2005年度(指数の底)では不足約137億円。2024年度は収入約768億円、需要約956億円、不足約188億円です。
つまり、指数の低下は「税収の下降トレンド」ではなく、需要の伸びが収入の伸びを上回った結果として読めます。では、なんの需要が伸びているのか——その分解はこの記事では扱いません。次の問いとして残します。
他都市と比較した倉敷市の位置どり
財政力指数の数字だけでは、状況が読みにくいので、他都市との比較をものさしにします。比較はすべて2024年度の確定値です。
まず岡山県内です。

倉敷市は0.82で県内1位です。岡山市は0.74。最も低い西粟倉村は0.12です。
次に、政令指定都市と倉敷市を並べます。

1.0を超えているのは川崎市の1.06のみです。倉敷市の0.82は、静岡市と同じ水準で、政令市の中では中位付近です。岡山市は0.74、いちばん低い新潟市は0.64です。
最後に、同格の中核市です。

頂点は豊田市の1.41。岡崎市は1.00。1.0以上はこのあたりのごく少数です。倉敷市の0.82は、中核市62市中おおよそ18位です。
個人的な感想
倉敷民として、こう思います。
財政力指数は、1以上で一人前。1を割ったら恥ずかしいと思わないといけない。
他都市と比べてマシ、と思ってはいけません。ものさしは相対順位ではなく、1.0です。
県内1位でも、政令市の中位でも、中核市で上位寄りでも、0.82は1未満です。育った頃の「不交付団体である誇り」と、いまの数字を重ねて読むと、その差がはっきりします。
まとめ
財政サイクルを読む入口として、倉敷市の財政力指数を見ました。
- ピークは1972年度の1.54。その後は長期低下
- 1998年度に1.0を割り、以降は交付団体側
- 直近の確定値は2024年度の0.82
- 理由の骨格は、収入の伸びより需要の伸びが大きいこと(図2)
次に知りたいのは、こうです。では、なんの需要が伸びているのか。 基準財政需要額の内訳へ、話を進めようと思います。
